本年度は前年度同定したシクロラバンデュリルジリン酸合成酵素(CLDS)の組換えタンパク質をDMAPPと反応し、その反応産物の構造解析を行った。フォスファターゼによって反応産物からジリン酸を除去した化合物の構造をN厭によって解析したところ、シクロラバンデュロールであることが確かめられた。そのことより、CLDSがDMAPPの縮合と環化によってシクロラバンデュリルジリン酸を合成する新規のプレニルジリン酸合成酵素であることが明らかになった。このCLDSによって合成したシクロラバンデュリルジリン酸を、前年度までに同定したプレニル基転移酵素とフラビン依存型酸化酵素の反応系に供給して、フェナジン-1-カルボン酸のプレニル化反応を行った。この反応によるラバンドシアニンの生成が確認できたことから、シクロラバンデュリルジリン酸がプレニル基供与体として働くことも明らかにすることができた。また、ラバンドシアニンの生産菌においてclds遺伝子を欠失させたところ、ラバンドシアニンの生産が失われたため、CLDSがラバンドシアニンの生合成において確かにシクロラバンデュリ'ル基の形成に関与することが確かめられた。さらに、本来ラバンドシアニンを生産しない放線菌Streptomyces lividans TK23を用いたラバンドジアニン異種生産系を構築し、本研究で同定した遺伝子がラバンドシアニンの生合成に必要十分であることを確かめた。CLDSの詳細な反応機構を明らかにするために結晶構造解析も試みた。最終的な構造の決定には至らなかったが、Nativeタンパク質、およびセレノメチオニン置換体タンパク質の結晶を作製し、高い分解能の回折データを取得することができた。今後、構造を明らかにすることで新規のテルペノイド生合成機構が明らかになると期待される。以上のラバンドシアニンの生合成研究に加えて、放線菌の生産するプレニル化インドールの生合成についても研究を行った。
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