研究課題
ガムシ科ガムシ亜科の幼虫形態の解明前年度に投稿したガムシ族・スジヒメガムシ族・ヒラタガムシ族7属11種、マルガムシ属3種の幼虫形態の記載論文の改訂を進め、論文として出版された。加えて、これまでに十分な形態研究がなされてこなかったタマガムシの幼虫と、未知であったエゾコガムシの未成熟期(卵嚢・幼虫・蛹)について形態研究を行った。本研究には、同定および系統解析に有用な一般形態に加え、刺毛配列の詳細な記載が含まれる。本研究では齢期間の形態変化にも着目している。齢期間の変異は時に誤った形態評価を生み出すため、幼虫形態を正確に評価する上で必ず押さえなければならない点であるが、これまで取り扱われることが少なかった。刺毛配列を含む幼虫形態の齢期間変化を広範かつ詳細に検討した例はこれまでにほとんど存在せず、幼虫形態評価の指針として今後の研究に寄与することが期待される。研究の結果、頭部付属肢において齢期間の形態変化傾向があることを確認した。一次刺毛は齢期を通じて、かつグループごとに安定していた。二次刺毛は、個体変異がみられるものの、グループ内で一定の傾向を示した。ガムシ科における二次刺毛の相同性は今のところ不明であるが、今後より広い範囲でこれらの相同性を追求することで、二次刺毛から系統情報を引き出すことが可能になると考えられる。加えて、日本産ガムシ科水生種の幼虫の属までの検索表を作成し、同定の便を図った。上記のガムシ科甲虫は、河川や、水田、池などの環境に普通種として分布する種を多く含んでいる。今後の研究の進展により、学術的貢献のみならず、環境教育・活動における一次資料として、社会的貢献をも視野に入れることができる。
2: おおむね順調に進展している
すでに5族9属16種の幼虫形態についての基礎形態研究がほぼ完了しており、他のグループの形態研究についても進行中である。うち4族8属14種について本年度論文として出版された。
継続して基礎形態研究を行うほか、不足している分類群については標本を得ることを目的として野外調査を行う。必要に応じてDNAバーコーディングを行い、幼虫と成虫の対応をつける。形態による系統解析を行い、系統仮説を提唱する。
すべて 2011
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件)
Acta Entomologica Musei Nationalis Pragae
巻: 51(supplementum) ページ: 1-118
Journal of Natural History
巻: 45 ページ: 2757-2784
10.1080/00222933.2011.602805