本年度は、昨年度に続き、日本産ガムシ亜科とクロシオガムシ亜科の幼虫形態について研究を遂行した。これらの成果と、これまでの研究結果を併せて、博士論文の形でまとめた。本年度の成果の一部は3論文として発表済みである。博士論文の未出版部分については、順次論文として投稿する予定である。 まず、より正確で明瞭な形態の理解を目的として、ガムシ科幼虫の一般形態について、既知の知見と研究代表者の形態観察の結果を合わせて整理した。日本産ガムシ亜科11属17種、クロシオガムシ亜科1属1種の幼虫形態を、一般形態・頭部刺毛相・齢期間の形態変化に重点を置き、詳細に記載した。これらの分類群のうち、すでに論文として出版したものは、博士論文執筆にあたり、そのすべてを再検討した。 次に、クロシオガムシ亜科の幼虫・成虫形態情報を用いて、ガムシ科系統仮説の再構築を行った。本亜科はガムシ科の系統上基部に位置するとされており、系統上重要な分類群であるが、幼虫形態は未知であった。これまでの研究で明らかとなったクロシオガムシの幼虫形態は、従来の系統仮説を反映しないものであった。本亜科の系統位置を推定するため、先行研究を利用して系統仮説の再検討を行った。その結果、クロシオガムシの系統位置は、従来推定されていた系統位置と異なり、ガムシ亜科の一属であることが明らかとなった。この結果はすでに論文として投稿済みである。 本研究は、日本産ガムシ亜科の幼虫形態を詳細に記載し、明らかにすると共に、これまで広く受け入れられてきたクロシオガムシ亜科の系統位置について、初めて再検討を行ったものである。これらの結果は、これからガムシ科の系統・進化を理解する上で重要な基礎的情報になることが期待される。
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