心不全の進行や心筋細胞肥大の進行には心筋特異的転写因子GATA4とHAT(ヒストンアセチルトランスフェラーゼ)活性をもつp300の協調的な作用が重要な役割を担っている。このp300/GATA4経路の更なる制御メカニズムを解明するため、プロテオミクス解析にてGATA4結合タンパクを同定し、その中のNuRD複合体などのリプレッサー複合体の構成蛋白であるRbAp48/46に着目した。本研究では、p300/GATA4経路におけるRbAp48/46の影響を検討することを目的とした。 【方法・結果】 HEK293Tでの免疫沈降・WB法による解析でRbAp48、RbAp46はどちらもGATA4と直接結合し、p300によって誘導されるGATA4やヒストンのアセチル化、ANFやET-1のプロモーターへのGATA4のDNA結合能やプロモーター活性の亢進はRbAp48、RbAp46の発現によって抑制された。ラット胎児初代培養心筋細胞を用いたレポーターアッセイではRbAp48やRbAp46はフェニレフリン刺激で亢進するANFやET-1のプロモーター活性を抑制した。RbAp48およびRbAp46強制発現させた心筋細胞はフェニレフリン刺激によって誘導されるGATA4のアセチル化や心筋細胞の肥大を有意に抑制した。shRNAにて心筋細胞中のRbAp48/46をノックダウンさせるとGATA4のアセチル化やANFやET-1のプロモーター活性が亢進し、心筋細胞の肥大が誘導された。またフェニレフリン刺激はGATA4とRbAp48およびRbAp46との結合を減少させ、ANFプロモーターのGATAエレメント上からのRbAp48、RbAp46の遊離やRbAp48、RbAp46の核外への移行を誘導した。 【結果】 RbAp48/46はp300/GATA4経路によって誘導される心筋細胞肥大を抑制した。また、肥大刺激によってRbAp48/46はGATA4から遊離したことから、p300/GATA4と機能的なコンプレックスを形成し、心筋細胞肥大反応を制御していることが示唆された。
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