研究課題/領域番号 |
10J03459
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研究機関 | 基礎生物学研究所 |
研究代表者 |
矢野 幸司 基礎生物学研究所, 共生システム研究部門, 特別研究員(PD)
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キーワード | ミヤコグサ / 硫酸イオン / 根 / 形態形成 / 根粒 |
研究概要 |
本研究は、多面表現型を示す突然変異体を解析することで、根粒と他器官の器官形成における、遺伝的メカニズムの共通性を明らかにすることを目的としている。昨年に引き続き、突然変異体の戻し交配およびマップベースクローニングを進めた。その結果、根粒と根の分化・発達に異常を呈した突然変異体系統である301-002において変異遺伝子を見出した。また、昨年度に変異遺伝子を見つけた268の相補試験を行った結果、LRR型受容体キナーゼが原因遺伝子であることを確認した。そこで、268の詳細な表現型解析を行った。その結果、268は硝酸イオンに対する応答に異常を示すことが明らかになった。そこで、この変異体をarn1(aberrant response to nitrate 1)と名付けた。arn変異体は、硝酸イオン欠乏環境下で主根の伸長が強く阻害された。一方、arn1変異体を1.0mMの硝酸イオンを含む培地で生育させると、主根の伸長が回復した。この結果から、ARN1遺伝子は硝酸イオン欠乏環境下における根の形態形成の制御に関わっていることが示唆された。また、arn1変異体は側根や根毛の形成にも異常を起こしていた。更に、根粒形成について、arn1変異体と野生型を比較した。その結果、arn1変異体は野生型に比べて根粒着生数が減少していた。根粒は、土壌中の窒素量によってその着生数が制御されていることから、ARN1遺伝子が根粒着生にも関与していると考えられる。現在、ARN1の詳細な機能解析を進めているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
昨年に引き続きマップベースクローニングを進めることで、変異体の原因遺伝子を新たに同定することができた。また、arn1変異体の解析から、硝酸イオンによる根系発達の制御にLRR型受容体キナーゼが関与しているという非常に興味深い結果を得ることができた。以上のことから、研究は大きく進展した。
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今後の研究の推進方策 |
arn1変異体の解析から、LRR型受容体キナーゼが硝酸イオンによる根の伸長制御に関わっていることを明らかにした。硝酸イオンによる根の伸長制御は以前から知られているものの、その分子基盤はいまだほとんど明らかになっていない。特に、ARN1遺伝子がLRR型受容体キナーゼをコードしていたことから、この遺伝子は硝酸イオンに対する植物の応答メカニズムの鍵遺伝子の一つである可能性がある。そこで、今後はARN1を中心に研究を進めていくことで、この分野の研究に大きく貢献できると考えられる。
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