研究課題/領域番号 |
10J03557
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
川口 葉子 大阪大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 日本基督教団 / 万国博覧会 / アジア・太平洋戦争 |
研究概要 |
アジア・太平洋戦争を経た戦後日本のキリスト教が、1960年代後半から70年代の社会的文脈において発揮したキリスト教としての実践を取り上げ、権力的な知のあり方を突き崩していく神学や表象の技法を通して社会的状況と切り結ばれていく運動を、日本万国博キリスト教館という具体的な場に即して考察した。 具体的には、1970年に大阪で開催された日本万国博覧会において、プロテスタント協議会、ローマ・カトリック、バチカンによって出展されたキリスト教館をめぐってなされた推進・反対運動、また遠藤周作らプロデューサーによってそれとは無関係に生み出された芸術的展示を通して、日本のキリスト教のもつ複層性と、近代的宗教としてのキリスト教のあり方を切り崩していく神学生や若手教師の運動を検討するとともに、キリスト教館それ自体の社会的性格におけるキリスト教の表象も含めて重層的に検討した。それにより、キリスト教において他者の存在が重要なものとして見出され、近代的知としてのキリスト教を内破していく契機となったことを明らかにした。 同時に、1967年の日本基督教団戦争責任告白をひとつの契機に万博問題をはじめとする教団紛争が始まったことで、アジア・太平洋戦争からつながるものとして戦後キリスト教を捉える視点を指摘し、神学的言説のうちにある戦争との連続性を批判的に検討した。それにより、言説と運動を切り結びながら戦後キリスト教を捉える視点を確保することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
資料収集で不足箇所があり、今後の収集が課題となるが、大筋としては研究計画に沿って進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き同時期の調査を進める。戦後キリスト教を具体的な場に即して検討するために、これまでと異なる場での調査を今後進めるつもりである。
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