本年度は、年度内に発生した大地震・巨大地震の基礎的な解析を実施したほか、小地震の解析に向けての手法開発を行った。 [1]メキシコ合衆国バハ・カリフォルニア州で2010年4月4日(UTC)に発生したM7.2の地震を、アメリカ・メキシコ両国内の地震計のデータを用いた断層すべりインバージョン法によって解析した。その結果、震源から北西・南東の両方向に断層破壊が進展する様子が捉えられた。特に、北西側では破壊伝播速度の急激な加速が捉えられた。UCサンディエゴのHuajian Yao博士が反復バックプロジェクション解析によって、サブイベントを抽出しているが、それらは大きな破壊の端に位置することもわかった。 [2]2011年3月11日(UTC)に発生した東北地方太平洋沖地震(M9.0)についても緊急解析を実施した。日本国内のKiK-net及びF-netの強震計記録を用いた断層すべりインバージョン解析を行った結果、激しい破壊が宮城県沖及び福島県沖の西側(陸側)に認められたほか、広い地域にわたって断層がすべっていることがわかった。この研究についてはまだ始まったばかりであり、平成23年度も継続して実施する予定である。 [3]規模の少さい地震の解析について、より簡便に、すなわち高速にモーメントレート関数を求める手法を開発することを試みた。まず、地殻内での散乱や反射によって生成されるコーダ波に狭帯域バンドパスフィルタをかけた上で、より小さい地震のものと比べることで、モーメントレート振幅比スペクトルを得る。次に、位相回復法によって、モーメントレート振幅スペクトルから各周波数帯での位相を推定する。そして、逆フーリエ変換で時間領域に戻すものである。ただし、これは位相のアンラッピングに課題を残している。平成23年度も継続して研究を進めて、この問題を解決していきたいと考えている。
|