研究概要 |
申請者らは疎水化多糖ナノゲルを基盤としたナノゲル工学による新規バイオマテリアルの創製を行ってきた。ナノゲルの特筆すべき点として、タンパク質を活性のある状態で放出する分子シャペロン効果を持つことが挙げられる。本研究ではまず、ナノゲルに官能基を修飾させた反応性ナノゲルに注目し、これと親水性ポリマーとを架橋させることでナノゲル集積ハイドロゲルの作製と機能評価を行った。この微粒子はナノゲルが生分解性を有する架橋により数十から数百のナノゲルが集積した構造をとっているのが特徴である。また、ナノゲルの濃度を高濃度にすることでマクロゲルを形成することから、再生医療の足場材料としての応用が期待できる。本年度は、微粒子の集積数をField-Flow Fractionationにより解析したところ、架橋密度に応じて約20-160個が架橋していることがわかった。また、マウスへ静注投与したところ、CHPナノゲルに比べて15倍血中に長く滞留することが確認できた。さらに、マクロゲルに関しては骨吸収を抑制するNF-κB inhibitorを内包させたものをマウス頭蓋骨欠損部に埋め込むと、内包量に依存して骨形成が促進されることを報告した(Neil Alles, Niroshani S. Soysa et al., Endocrinology, 151 (10): 4626-4634(2010)))。次に、ナノゲルに細胞接着性ペプチドであるRGDペプチドを付与したナノゲルの作製と機能評価を行った。RGDペプチドは血管新生中の内皮細胞、腫瘍細胞、破骨細胞等に高発現しているインテグリンと特異的に相互作用することから、がん細胞へのターゲティングに有用であると考えた。アミノ基とスクシンイミド及びマレイミド基とチオール基の二段階の反応により、RGD修飾ナノゲルの合成に成功した。このナノゲルとタンパク質との複合体を細胞に添加すると、エンドサイトーシスにより高効率に細胞内へ導入された。導入経路の詳細を検討したところ、複数の経路にて導入されていることから、リソソームでの分解を回避し、細胞質へとリリースされるタンパク質/ナノゲル複合体も見られた。以上より、RGD修飾ナノゲルはタンパク質デリバリーキャリアとして有用であることが示唆された(Asako Shimoda et al., Macromolecular Bioscience, accepted)。
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