研究概要 |
我々は親水性多糖であるプルランに疎水性基であるコレステロールを部分的に置換したコレステロール置換プルラン;CHPが、水中で自己組織的に会合し約30nmのナノゲルを形成することを見出している。ナノゲルはタンパク質を内部に取り込み、分子シャペロン効果により活性を保持したまま放出することができるのが特徴である。本研究では、ナノゲルに重合性基(アクリロイル基)を修飾させた反応性ナノゲルに注目し、これと親水性ポリマーとを架橋させることでナノゲル集積ハイドロゲルの作製と機能評価を行った。この微粒子はナノゲルが生分解性を有する架橋により数十から数百のナノゲルが集積した構造をとっているのが特徴である。また、ナノゲルの濃度を高濃度にすることでマクロゲルを形成することから、再生医療の足場材料としての応用が期待できる(Asako Shimoda et al., Colloids Surf B Biointerfaces. in press)。 本年度はまず、ナノゲル架橋マクロゲルの作製と機能評価を行った。ナノゲルのアクリロイル基の導入率及び濃度に伴いゲル強度を容易に調節可能であり、ナノゲルと複合化したタンパク質はナノゲルに内包されたままマクロゲルから放出された。また、血清含有培地での分解挙動を評価したところ、約10日間かけて徐々に分解することがわかった(Asako Shimoda et al., Macromolecular Research., 20,266-270 (2012))。このマクロゲルを用いて、インプラント治療時の骨の高さ・厚みが不足している場合に用いる骨再生を促す人工膜(GBR;guided bone regeneration)としての応用を試みた。ラット頭蓋骨に作製した直径5mmの欠損部に直径6mm、厚さ0.4mmのマクロゲルを被覆し、4週間後にμCTにて得られた骨の断層画像の解析を行った。コントロール及び市販のGBRメンブレンでは欠損部が残っているのに対し、ナノゲルを用いた場合にはほぼ新生骨が形成されているのが観察された。これより、ナノゲル架橋マクロゲルは骨再生の足場材料として有用であることが示唆された(Takayuki Miyahara et al., J Tissue Eng Regen Med,. in press.)。
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