本研究の目的は、病原体認識機構として知られるNucleotide-binding oligomerization domain (Nod)様受容体(NLR)の病原性大腸菌(EPEC)感染による活性化機構を分子・生体レベルで明らかにすることを目的とする。平成22年度は、マウス骨髄由来マクロファージを用いた実験系より、EPECによるNLR活性化の分子機構を明らかにし、ヒトのEPEC感染症に相当するマウスCitrobacter rodentium感染モデルの確立を行った。 1.NLR活性化に関与するEPEC側の因子及び宿主NLRの同定:マウス骨髄由来マクロファージを用いた実験系より、EPECにより活性化される宿主のNLRはNLRC4及びNLRP3であり、菌側のNLR活性化因子としてはIII型分泌機構(TTSS)が重要であるという結果が得られた。結論として、EPECのTTSSが、宿主のIPAF/Nalp3経路を活性化しASC>caspase-1経路の活性化を誘導し、IL-1β、IL-18を活性化型に変換するという結果が得られた。 2.C.rodentium感染モデルの確立:5-6週齢のC57/BL6マウスに5x10^8 C.rodentiumを経口感染した。本菌定着組織である大腸を採取し、蛍光免疫染色により菌の定着及び、ASCの組織内局在と活性化型IL-1βの存在を確認する実験系を樹立した。今のところ、大腸組織におけるASCや活性化型IL-1βの挙動を目で見える形で確認したという報告は存在せず、今後、生体内でのNLRの役割を知る為に重要な実験系を構築できた。
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