研究課題/領域番号 |
10J03901
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
中村 智栄 慶應義塾大学, 大学院・理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | ガーデンパス文 / 構造的曖昧文 / 眼球運動計測 / 自己ペースリーディング / 第二言語習得 / 母語理解 |
研究概要 |
研究内容 L2(外国語)学習者がL2言語音声のインプットを理解する際の処理過程を明らかにするプロセスとして、以下の3つのプロジェクトに取り組んだ。 (1)日本語ガーデンパス文における処理負荷と初分析理解保持の関係性について、文を読んでいる際の眼球運動計測実験 (2)日本人英語学習者のガーデンパス文処理における動詞の下位範疇情報知識の使用と初分析理解保持の影響について 研究成果 (1)について,大学生28名を対象に行った実験により、日本語のガーデンパス文の理解において、(1)関係節内の名詞句における意味バイアス及び(2)関係節の長さにより引き起こされる処理負荷により、初分析理解が正しく棄却されにくくなったことが実証された。 (2)について.大学生60名を対象に行った実験により、日本人英語学習者が文を読む際に動詞の下位範疇情報の知識の使い分けがうまくできていないことから、効率的な文理解を行えていない可能性が示された。また、初分析理解を正しく棄却できていない学習者ほどこの傾向が強いことが明らかになった。 研究の意義と重要性 (1)について.過去研究により再分析が必要であるガーデンパス文を処理する際、再分析を行った後も初分析理解が保持される現象(good-enough representation)が報告されていたが、この現象がどのような文処理過程の結果起きているのかについては明らかではなかった。本研究の結果から、関係節の長さや関係節内の名詞句バイアスの影響により文の処理負荷が高くなることにより、初分析理解が正しく棄却されにくくなるということが明らかとなった。 (2)について、これまで検証されてこなかった動詞の下位範疇情報が文処理に与える影響について英語母語話者と日本人英語学習者の違いを実験により明らかにし、英語を母語としない学習者においては初分析保持を正しく棄却できた学習者ほど効率的な文処理を行っているという新たな実験結果を提示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では、実験手法として自己ペース読み課題や反応時間の測定を用いることを予定していたが、実験協力者の協力を得ることにより、これらの手法に加え眼球運動計測の手法を取り入れることが可能になり、言語理解におけるより詳しい処理プロセスの観測が可能になったため。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究としては、日本人英語学習者が英語音声文を処理する際のプロソディー境界の影響を見る実験を行う。具体的には、"The stylist for the exhibition had dinner with the assistant."のような関係節を含む文を用い、"The styhst"と"hided"の間にプロソディー境界が置かれた場合と置かれない場合で理解に違いが出るかどうかを観察する。また、英語母語話者にも同様の実験を行い、データを比較することで母語話者と学習者における理解の差を分析する。
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