研究概要 |
子どもの精神的健康の問題の背後に夫婦関係の問題,特に夫婦間葛藤の存在することをこれまでの研究によって明らかにしてきたが(川島,2008),より効果的な臨床実践への応用のため,本研究では,両親の夫婦間葛藤と子どもの精神的健康上の問題との関連メカニズムを,発達精神病理学的観点から検証することを目的としている。夫婦間の葛藤と親子間コミュニケーションとの関連について,検討を行う。質問紙調査以外の手法を用い,縦断的な検討を行うことで,幼児の精神的健康に対する夫婦関係の問題の影響と,保護因子について検討することで,関連メカニズムの検証を行うことを目的としている。 平成22年度は,(1)幼児の精神的健康上の問題発生に関連する夫婦間葛藤の問題とそれに対する保護因子に関する基本的仮説を立て,(2)関連要因を調査するための測度と使用尺度の検討を行った。その際,幼児を持つ父母を対象としたグループディスカッションの参与的観察を行い(7~12月,母親29名,父親44名),これに基づき,幼児を持つ父母の育児観および夫婦間のサポートについての調査を行った。(3)このグループディスカッションや先行研究に基づき,調査用紙を作成,調査方法を決定した。(4)9月から10月にかけて,郵送による質問紙調査を完了した(幼児117名,平均4.8歳)。また,国内での学会発表を行い,子どもの精神的健康と夫婦関係の問題に関する発達精神病理学的枠組みからの研究について報告を行った。
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