研究概要 |
子どもの精神的健康の問題の背後に夫婦関係の問題,特に夫婦間葛藤の存在することをこれまでの研究によって明らかにしてきたが(川島,2008),より効果的な臨床実践への応用のため,本研究では,両親の夫婦間葛藤と子どもの精神的健康上の問題との関連メカニズムを,発達精神病理学的観点から検証することを目的としている。この目的のため,夫婦間の葛藤に関連する諸要因についての検討,ならびに,子どもへの影響過程としての子どもの情緒的反応,養育環境,親子間コミュニケーションといった関連因子について,検討を行う。質問紙調査以外の手法を用い,縦断的な検討を行うことで,幼児の精神的健康に対する夫婦関係の問題の影響と,保護因子について検討することで,関連メカニズムの検証を行う。 平成23年度は,(1)幼児の精神的健康上の問題発生に関連する夫婦間葛藤の問題とそれに対する保護因子について,平成22年度に行った調査結果の解析を行い,(2)引き続き,同一対象者に対する質問紙調査を行った。(3)さらに,平成23年度に行った国外研究者との共同研究結果を踏まえた調査用紙を整備し,翻訳を行い,平成24年度の調査に向けた準備を行った。 4月から8月にかけては,平成23年度に行った調査結果を解析し,9月の国内での学会発表(日本心理学会)での小講演において,子どもの精神的健康と夫婦関係の問題に関する発達精神病理学的枠組みからのこの調査結果とこれまでの研究について報告を行った。10月から11月にかけて,縦断的調査に向けた準備を行い,12月から1月にかけて,調査を実施した。これと並行して,平成24年度から開始する,国際比較調査の尺度項目を整備するため,米国の共同研究者と打ち合わせを重ねながら,尺度の検討を行った。
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