研究概要 |
生体アミン系は行動が改変される一般的メカニズムとして有力な候補である(Stevenson et al. 2000).オオツノコクヌストモドキの闘争記憶プロセスに生体アミン系が作用していることを検証するため,生体アミン関連遺伝子の本種でのクローニング(配列決定)を進め,オクトパミン受容体,オクトパミントランスポータ,オクトパミン合成酵素二種(チロシン脱炭酸酵素,チラミンβ水酸化酵素),やドーパミン合成・受容関連遺伝子など,10以上の配列情報を得ている.闘争行動後の個体の脳や食道下神経節からRNAを抽出し,解析する系を確立し,現在リアルタイム定量PCR法を用いた発現解析から,闘争の勝敗によって生じる脳内の変化を探索している. これと並行して,闘争結果に影響する武器形態および武器を支える器官の適応的機能と形態形成メカニズムについて研究を進めている.オスの武器形態および武器を支える器官の形態の集団内変異の解析から,大きな武器を備えるには武器を支える器官が重要であることを見出し,実際の闘争においても支持形質の適応性が支持されている.この結果について現在,国際誌への投稿を準備中である,また,形態形成については,オオツノコクヌストモドキの幼虫に幼若ホルモン類似体を投与することにより,主要な武器である大顎の誇張化に加えて,頭部を支える胸部や角が大きくなることを見いだしている.これらは動物の表現型が統合的に進化するプロセスとうまく合致しており,複合形質の進化メカニズムに新たな知見をもたらすものである.
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