研究概要 |
本研究では、核内における糖修飾が関与する新しいタンパク質機能制御を明らかにすることが目的である。そこで1年目は、以下の2点に関して研究を実施した。 (1)クロマチン上の主要な糖修飾化因子を探索するために、生化学的手法を用いて網羅的に核内糖修飾化因子の精製・同定を試みた。GlcNAc基を特異的に認識する抗体(RL2)を利用した精製の結果、遺伝子発現制御において重要な役割を果たすヒストンが同定された。さらにin vitro OGT糖修飾化反応や質量分析機により、コアヒストンであるヒストンH2A、H2Bが特異的に核内糖修飾化酵素(OGT)によって、糖修飾をうけることが明らかになった。これらの成果は、第二著者として現在投稿中である。(Fujiki R,Hashiba W. ea al. Histone H2B GlcNAcylation facilitates its monoubiquitilation. in revision) (2)(1)の結果より、ヒストンH2BがH2Aと比較してGlcNAc化を受けていたことから、ヒストンH2Bを今後の核内レクチンを探索する上でのベイトにすることにした。はじめにヒストンH2Bのどの部位が糖修飾されるのかその部位のマッピングを試みた。一般的にヒストンはNかC末端側に修飾が入ることが知られていることから、両末端部の糖修飾されるアミノ酸部位にアラニン変異を導入し、in vitro OGT糖修飾化反応をおこなった。その結果、ヒストンH2BはC末端側に糖修飾が入ることが明らかになった。次に、ペプチドプルダウン法をおこなうためのペプチドの設計をおこなった。N末端にはタグとしてビオチン付加し、中心部に糖修飾部位を据えたペプチドを合成した。このペプチドを用いて、ペプチドプルダウン法により核内レクチンの精製・同定をおこなった。その結果、HSP70を同定した。HSP70はGlcNAc基を認識するレクチンであることが報告されていることから、この方法により核内レクチンを同定することには一応の成功を収めた。一方、HSP70はGlcNAc基を認識するレクチンではあるが、我々の大雑把な認識では配列特異性が存在せず、ヒストン認識に特徴的なエピジェネティック制御を説明するものではないことが問題であった。
|