研究課題/領域番号 |
10J04062
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
岩崎 未央 京都大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | Proteomics / LC-MS/MS / HeLa / Monolithic column |
研究概要 |
<研究背景>タンパク質を網羅的に同定・定量する際には、ナノ液体クロマトグラフィー-質量分析法(nanoLC-MS/MS)を用いたショットガンプロテオミクスを用いるのが一般的である。しかし、ショットガンプロテオミクスは未だ成熟した技術ではなく、試料中のすべてのタンパク質を1度に同定するのは困難である。 ショットガンプロテオミクスの問題点として、主に以下の2点が考えられる。 1. 濃度差:ヒトタンパク質間の発現量の差が非常に大きく、タンパク質量差の大きい試料が同時に質量分析計に打ち込まれると、イオン化抑制により量の少ないものが検出できないことがある。 2. 複雑性:ショットガンプロテオミクスでは試料中のタンパク質を断片化して測定するため、試料の複雑性が非常に高くなる。 そこで本研究では、分析化学的手法、情報学的手法を駆使し、試料の濃度差および複雑性の問題を解決し、ショットガンプロテオミクスを用いたタンパク質の同定効率を改善することを目的としている。 <研究実施状況>これまで、モノリス型シリカカラムを用いたLCシステムで分析することで、分離能が格段に向上し、同定効率が著しく改善することを示してきた。本年度は、モノリス型シリカカラムを用いたLC-MS分析システムをヒト試料へ応用した。 HeLa細胞を試料とし、分析条件を最適化したのちに、200cmのモノリス型シリカカラムを用いてLC-MS/MSによる分析を行った。その結果、8時間のグラジエント分析を行うことで、5,970ヒトタンパク質を同定することができた。この結果は、分析前処理なしでnanoLC-MS/MSで測定したこれまでのヒトプロテオーム解析報告の中で、最大の同定数である。今後、さらに高分離能を有するモノリス型シリカカラムの作製、および分析条件の改善などを行い、同定効率を改善したいと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の計画は、LCの分析条件を最適化し,次世代分析手法をHeLa細胞に応用して評価を行い,論文発表することであったが、実際に計画を遂行し、論文発表を行うことができたため。
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今後の研究の推進方策 |
さらに高分離能を有するモノリス型シリカカラムの作製、および分析条件の改善を行い、ヒトプロテオームの同定効率および同定できる濃度差範囲を拡大したいと考える。
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