研究課題
本年度の研究では、これまで構築した排出量取引制度の制度分析のための経済実験手法を応用し、実際に現実の市場で起こりうる状況がどのように排出量取引に影響を与え、最終的に取引制度のパフォーマンスに影響を与えるか分析を行うことを目的とし、最終的に具体的な現状の排出量取引制度の改善案の提案を行うことを目指していた。本研究により、今後の国際的な排出量取引制度の今後の在り方を議論できるだけではなく、国内で整備が進む国内排出量取引制度の設計議論においても、どのような国内的な事情が制度に影響を与えるか考察することが可能となる点で研究意義は学術面だけでなく、社会的にも大きな意義がある。研究成果としては第1に、新たに制度を立ち上げる、またより地域的な市場を構築した場合に発生が懸念される市場参加者間のマーケットパワーの発生可能性について分析を行い、新たな知見を得ることができた。既存研究とは異なり、近年発展著しい双方寡占理論を用いた理論設定のもと、排出量取引実験を行い、実際に既存研究では言及されなかった市場参加者の限界排出削減費用がマーケットパワーの一因となっている可能性を示すことができた。とくに排出権の価格形成や市場参加者の利潤の移動など、現実の制度運用上、問題となる課題を提示することができた第2に排出量取引制度以外の諸要因と低炭素、気候変動対策との関係性を計量経済分析により明らかにし、これまでの既存政策の効果を再評価し、今後の排出量取引とのポリシーミックスの在り方に関して考察することができた。
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Discussion paper series of Kwansei Gakuin University School of Economics
巻: No.73 ページ: 1-26
Climate change economics
巻: Vol.2, Issue 3 ページ: 237-255
10.1142/S2010007811000280
環境科学会誌
巻: Vol.24, No.4 ページ: 384-399