1.微小核形成効率の良い培養細胞にMacroH2AとEGFP融合タンパク質(MH2A-EGFP)発現プラスミドを遺伝子導入し、不活性X染色体を恒常的にMacroH2A-EGFPで標識した細胞株を作製した。今後、作製した細胞株を用いて微小核の形成、分離を行い、MH2A-EGFPが不活性X染色体に顕著に集積することを利用して、GFP強度を指標に不活性X染色体を含む微小核のソーティングを行っていく。その後、不活性X染色体に集積するタンパク質やRNAを網羅的に解析することで、X染色体不活性化に関与する因子を新たに同定出来ると考えている。 2.これまでに、CAGプロモーターの制御下でMH2A-EGFPを発現するトランスジェニック(Tg)マウスを作製し、独立した8ラインのマウスを得ている。マウスを実体蛍光顕微鏡下で観察したところ、全身で緑色蛍光が観察され、拡大すると緑色蛍光は皮膚の核に局在しているように見られた。更に組織切片を作製し、詳細に観察したところ、緑色蛍光は核に局在し、雌の核内では1点の強いシグナルの観察されるものがあった。またTgマウス由来胚でも核に緑色蛍光が観察され、雌では8細胞期頃から核内に見られた強いシグナルの一部が、不活性X染色体のマーカーとなるXist RNAと共局在し始めることがRNA FISHによって明らかとなった。更に胚盤胞期では、核内に強いシグナルが1点観察され、そのシグナルの大部分はXist RNAと共局在した。雄では雌の組織や胚の核内で見られた1点の強いシグナルは観察されなかったことから、我々のMH2A-EGFP Tgマウスを利用することで、初期胚および個体レベルで、不活性X染色体を追跡出来ることが示唆された。今後このTgマウスの詳細な解析を行うことで、X染色体が初期胚でどのような時間制御によって不活性化されるのかを明らかに出来ると期待される。
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