研究課題/領域番号 |
10J04293
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
星島 光博 岡山大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | CCNファミリー / CCN2/CTGF / CCN3/NOV / 軟骨細胞 / アグリカン |
研究概要 |
CCN2/CTGFは軟骨に強い発現を示し、軟骨細胞の増殖・分化や線維芽細胞や血管内皮細胞の接着・遊走など多彩な生理機能を発揮するが、一方で異所性の過剰な発現が種々の線維症や癌細胞で観察されることから、生体内では発現量やその活性は厳密にコントロールされていると思われる。昨年度までに我々は軟骨細胞様細胞株HCS-2/8より作製したcDNAライブラリーからCCN2と結合する因子として、CCNファミリーに属するCCN3とCCN2自身を同定し、in vivoおよびin vitroでこれらの分子が結合している事を報告した。 今年度はこれらの分子間相互作用が軟骨細胞に及ぼす影響について調べることを目的とし、以下の結果を得た。 1.CCN2-CCN2間とCCN2-CCN3間の結合の強さをさらに確認するために、マイクロプレートにリコンビナントのCCN2またはCCN3を固定し、ビオチンラベルしたCCN2との結合を調べたところ、CCN2-CCN2間とCCN2-CCN3間の結合の強さは同程度で強い値を示した。 2.CCN2とCCN3の相互作用が軟骨細胞の基質産生に及ぼす影響を調べるために、軟骨細胞様細胞HCS-2/8にリコンビナントCCN2およびCCN3を添加し、アグリカンmRNAの発現レベルをRT-PCRにより確認したところ、CCN2によりその発現レベルは上昇し、CCN3では逆に低下した。また、アグリカンmRNA発現のCCN3による低下はCCN2の濃度依存的に回復した。 3.抗CCN2モノクローナル抗体11H3がCCN2-CCN2間の結合に競合する一方、CCN2-CCN3間の結合は促進する事を固相化結合実験により明らかにした。 4.CCN2およびCCN3を添加したHCS-2/8細胞に抗CCN2抗体(11H3)を同時に添加することにより、CCN2のみを添加した際に見られたアグリカンmRNAレベルの上昇は消失し、一方でCCN2とCCN3共存下でのアグリカンmRNAレベルはさらに上昇する事が明らかとなった。 以上の結果より、CCN3とCCN2がホモダイマーあるいはヘテロダイマーを形成し、これがCCN2およびCCN3の活性を相互に調節する機構として生体内で働いていると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CCN2が軟骨細胞に及ぼす影響を調べるため、初年度にCCN2と結合する因子としてCCN2自身およびCCN3を同定し、これらの因子の結合様式を明らかにしてきた。さらに本年度には、これらの分子間相互作用が軟骨細胞に及ぼす影響を、アグリカンmRNAの発現を指標に解析し、CCN3とCCN2がホモダイマーあるいはヘテロダイマーを形成し、これがCCN2およびCCN3の活性を相互に調節する機構として生体内で働いていること示してきた。現在、これらの結果をまとめて、国際雑誌に投稿中であり、進行状況は概ね順調であると言える。
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今後の研究の推進方策 |
CCN3を軟骨特異的に発現するトランスジェニックマウスの表現系を解析し、CCN2のノックアウトマウスの表現系と比較する。CCN3を軟骨特異的に発現するトランスジェニックマウスについては、CCN3 cDNAを軟骨マーカーであるII型コラーゲンプロモーター下流に接続したコンストラクトを作製し、マウス受精卵に導入することで作製した。 このマウスの軟骨組織における表現型について現在解析中である。 さらに、軟骨細胞様細胞株HCS-2/8より作製したcDNAライブラリーからCCN2と結合する因子をYeast two-hybrid法により幾つか同定しており、現在解析を進めている。
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