CCN2/CTGFは軟骨に強い発現を示し、軟骨細胞の増殖・分化や線維芽細胞や血管内皮細胞の接着・遊走など多彩な生理機能を発揮するが、一方で異所性の過剰な発現が種々の線維症や癌細胞で観察されることから、生体内では発現量やその活性は厳密にコントロールされていると思われる。昨年度までに我々は軟骨細胞様細胞株HCS-2/8より作製したcDNAライブラリーからCCN2と結合する因子として、CCNファミリーに属するCCN3とCCN2自身を同定した。また、これらの分子が結合し、アグリカンmRMの発現を制御している事を報告した。 今年度は、さらにCCN2とCCN3間の結合の生理的意義を明らかにすることを目的とし、以下の結果を得た。 1)アグリカンと同様に、HCS-2/8細胞においてH型コラーゲンmRNAレベルが、リコンビナントCCN2添加により上昇し、リコンビナントCCN3添加で低下すること、CCN3によるH型コラーゲンmRNAの発現抑制は、CCN2の濃度依存的に回復することを示した。 2)HCS-2/8細胞における内在性のCCN2とCCN3が結合することを、それぞれの抗体を用いた免疫沈降により確認した。 3)蛍光免疫染色により、内在性のCCN2とCCN3が細胞表面および細胞内で共局在していることを明らかにした。 以上の結果より、CCN2は軟骨細胞において基質合成を促進する一方で、CCN3単独ではこれを抑制するが、CCN3はCCN2とヘテロダイマーを形成することで、軟骨細胞の基質産生を促進することが示された。このことはCCN2とCCN3が相互作用することで、互いの活性を厳密に調節し、生体内における軟骨組織の恒常性を維持している可能性を示唆している。 さらに、CCN2の結合蛋白質の一つとして、細胞内の小胞輸送に関与する低分子量G蛋白質であるRab14 GTPaseを新たに同定した。CCN2とRab14が相互作用し、軟骨細胞においてプロテオグリカンを含む小胞の輸送に関与している可能性を示すデータを得ている。このことはCCN2がRab14のエフェクター分子として作用し、細胞内のシグナル伝達機構に関与することを示唆しており、軟骨細胞の機能を解明するための新たな知見である。
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