研究課題
研究目的我々はこれまで、NSAIDs起因性胃潰瘍(及び小腸潰瘍)の発症にNSAIDsによる胃粘膜細胞死(特にアポトーシス)が必須であること、及びこの胃粘膜細胞死誘導作用がNSAIDsの主作用である抗炎症作用(COX阻害作用)とは無関係であることを見出し報告している。従ってこのアポトーシス誘導の分子機構を解明し、アポトーシス誘導性の弱いNSAIDsを開発する方法を確立することは大変重要である。これまでの研究から、我々はNSAIDs起因性胃潰瘍の発症には、NSAIDsの膜傷害作用による胃粘膜アポトーシスが重要であることを発見した。このことから私は、膜傷害性の少ない薬剤が、副作用の少ない真に安全なNSAIDsであると考えている。そこで、膜傷害(アポトーシス誘導)性の少ないNSAIDs、即ち胃潰瘍(及び小腸潰瘍)副作用の少ないNSAIDsの開発を目指した研究を現在行っている。研究成果(膜傷害性の少ないNSAIDsの発見)我々は既存のNSAIDs(約100種)、自ら合成したNSAIDs(約200種)、製薬企業・他大学ら供与されたNSAIDs(700種)からなるNSAIDsライブラリー(合計1000種以上)を構築している。そこで今回、これらのNSAIDsの膜傷害性を調べ、傷害性の低いものをいくつか選択した。次に選択したNSAIDsの薬理作用を動物実験で確認した。具体的には、胃潰瘍誘発副作用、小腸潰瘍誘発副作用、抗炎症作用を検討した。選択した膜傷害性の少ないNSAIDsが、既存のNSAIDsと同等の抗炎症作用を示すにも関わらず、胃潰瘍誘発副作用、小腸潰瘍誘発副作用が少ないことを見出した。その結果、我々の仮説(膜傷害性を原因とするNSAIDsのアポトーシス誘導作用は、NSAIDsの抗炎症作用には関与しないが、胃潰瘍誘発副作用、小腸潰瘍誘発副作用には関与していること)を支持する結果が得られた。またこのようなNSAIDsは、医薬品として大変有用であると考えられるので、今後有用なNSAIDsに関しては、それをリード化合物としてその誘導体を多数合成し、より膜傷害性の少ないNSAIDsの発見を目指すことを計画している。
すべて 2012
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Journal of Medicinal Chemistry
巻: (in press)
10.1021/jm300049g