本研究ではCuマトリックスとCNTの界面結合性を改善するため、炭化物形成元素であるCrを過飽和に固溶させたCuCr合金粉末を作製し、CNTとの複合化を試みた。また、界面組織を詳しく観察した結果、以下の内容が明らかになった。 CuCr粉末を用いてCuCr/CNT複合材料を作製することにより、CuCr/CNT界面に島状のCr炭化物を形成させることができた。CuCr/CNT複合材料において、形成したCr炭化物はエピタキシャル的に、欠陥部から外側に向かって成長することがわかった。また、形成したCr炭化物の結晶構造は主にCr_7C_3であるということがわかった。これはCr_7C_3がCr_3C_2よりGibbs自由エネルギーが低く、形成しやすいためであると考えられる。また、SPS焼結法を用いて1263K焼結を行った場合、Cr炭化物の形成反応は10分以内で終わると考えられる。島状のCr炭化物をCNTとCuマトリックスの界面に生成させることに成功することによって、Cu/CNT複合材料の放熱特性を保ったまま、界面結合性を改善することができたと考えられる。炭化物を生成しない金属に炭化物生成金属を微量添加し、CNTと複合化させ界面を制御した研究例はまだ報告なされていない。本研究で作製したCuCr/CNT複合材料では、大きな熱伝導率の減少は見られず、熱膨張係数は低下した。従って、CrをCuに微量添加し、Crが熱伝導率に及ぼす影響は少なくした上で、界面結合性を改善できたと考えられる。
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