研究概要 |
関節リウマチは全人口の1%が罹患する炎症性骨疾患である。発症機序は未だ不明な点が多いが、近年T細胞を標的とした治療法の有効性が報告されており、T細胞の重要性が広く認識されつつある。T細胞には、免疫応答を抑制する制御性T細胞等のサブセットと、免疫応答を促進するサブセットに分けられる。本年度では、制御性T細胞と考えられてきた細胞集団の一部が、炎症を促進させる細胞に転換することを見出した。また、この細胞は滑膜細胞との相互作用により、骨破壊を引き起こす細胞である、破骨細胞の分化を促進することをin vitroにおいて見出した。今後この詳細なメカニズムについて検討する予定である。この知見はT細胞免疫の理解に基づいた治療法の確立に貢献すると考えられる。 制御性T細胞はT細胞特異的にSTIM1,2を欠損したマウスでは細胞数が減少するが、STIMの機能の詳細は不明であった。本年度ではFoxp3ノックインマウスとT特異的にSTIMを欠損させたマウスを交配し、STIM欠損の制御性T細胞を単離できる実験系を確立した。このマウスを利用することで、IL-2シグナルの持続的な活性化により制御性T細胞の細胞数は回復するが、抑制機能は回復しないことを見出した。したがってSTIM分子の機能のひとつとして制御性T細胞の抑制機能関連分子の発現を制御が考えられる。この知見は制御性T細胞の抑制機能のメカニズムの解明に貢献すると考えられる。
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