研究概要 |
循環型社会構築を目指し、再生産可能な生物資源を有効利用するという観点から、人工合成が困難な特異的構造を有する天然多糖を化学改質することにより、新規機能性物質の創製を検討した。本研究では、三重らせん構造を有する高結晶性のβ-1,3グルカンに対し、弱酸性下でのTEMPO触媒酸化及び軽微な微細化処理を施し、粗大物を遠心分離することで光透過度が95%以上の透明な水分散液を調製した。また、10倍程度に濃縮した水分散液を直交偏光下に置くと、静置状態で偏光を示したことから、水分散液中にナノレベルの構造体が分散していることが示唆された。透過型電子顕微鏡及び原子間力顕微鏡で観察を行った結果、幅約1.5nm、長さ約400nmのフィブリルが確認された。報告されているβ-1,3グルカンの三重らせんの直径と比較したところ、よく似た値であったことから、分散液中のナノフィブリルは三重らせん構造を維持していることが推測された。また、同様の反応を低結晶性のβ-1,3グルカンに適用すると高分子量ポリグルクロン酸を調製可能なことが分かった。同様の化学構造を持つカルボキシメチルセルロース(CMC)の主用途が増粘剤であることを踏まえ、調製したポリグルクロン酸水溶液のレオロジー特性を分析した。回転式のレオメーターを用いて粘度や、動的粘弾性について測定を行った結果、同濃度で比較するとCMCよりも粘度が低く高濃度化が可能であることが分かった。現在、種々のイオンを添加した際の特性変化について検討中である。
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