再生産可能な生物資源の有効利用を探るという観点から、特徴的な構造や機能を有する天然多糖を化学改質することにより新規機能性物質を創製することを目的に研究を行った。本研究では、三重らせん構造を有する高結晶性のパラミロンに対し、化学改質と軽微な微細化処理を経ることにより、らせん構造を持つナノ構造体を調製し、その基礎的知見及び材料化の道を探ることを検討した。これまでの検討により、パラミロンに弱酸性TEMPO触媒酸化を適用することで、結晶表面の1級水酸基を酸化することが可能となり、水中で超音波処理を行うことで平均で長さ約400nm、幅約2nmのナノフィブリルを調製することに成功した。調製したナノフィブリルの幅と、報告されているパラミロンの三重らせん構造の直径が同程度であることから、調製したナノフィブリルはパラミロンの三重らせん構造を単離したものであることが示唆された。また、低結晶性のカードランに弱酸性TEMPO触媒酸化を適用することで、高分子量のポリグルクロン酸(カーデュロン酸)が調製でき、得られたカーデュロン酸はこれまでTEMPO触媒酸化により得られた水溶性ポリグルクロン酸の中で最も高分子量であったことから、カーデュロン酸の物性について検討を行った。カーデュロン酸と類似した構造を持つアルギン酸ナトリウムなどが増粘剤として一般に用いられていることから、カーデュロン酸水溶液のレオロジーについて検討を行った。その結果、アルギン酸やカルボキシメチルセルロース等と同等の重合度やカルボキシル基量を持ちながら、水溶液の粘度が低く高濃度化が可能であることが見出された。溶液中での分子の拡がりを調べたところ、カーデュロン酸はアルギン酸等と比較すると分子鎖の拡がりが小さいことが分かった。このことは、TEMPO触媒酸化により得られたポリグルクロン酸は均一な構造が溶液中での分子鎖の影響を与えたことを示唆している。
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