本研究は、リスザル、オマキザルなどの霊長類を対象として、遺伝子解析および、視覚的認知や社会的認知の比較認知研究をおこない、色覚などの視知覚や、社会性が霊長類でどのように進化してきたかを遺伝子レベルから個体の行動レベルの方法論を用いて、幅広く調べることを目的としている。 ・遺伝子プロファイリング:受入れ研究室で飼育されているリスザル、オマキザル全個体より糞や毛サンプルからDNAを抽出し、赤一緑視物質遺伝子および性格関連遺伝子群の遺伝子型の決定をおこなった。その結果、リスザル、オマキザルともに、2色型色覚個体と3色型色覚個体が存在し、色覚に多様性があることがわかった。また、アンドロゲン受容体など、神経伝達物質関連遺伝子の中にも、多型が存在することが確認された。このことより、今後行動実験の結果との関連性を調べることができると期待される。 ・刺激の作成:リスザル、オマキザルの物体表面知覚特性を調べるための刺激セットを作成した。また、プログラミングソフトウェアのMATLABなどを用いて刺激呈示用ディスプレーのキャリブレーションをおこなう方法を検討している。 ・認知実験:リスザル3個体を対象として、タッチパネルディスプレーに本実験とは無関係の刺激を呈示し、見本合わせ課題のトレーニングをすすめている。 今後、既に見本合わせ課題の般化が成立しているオマキザル、また般化が成立したリスザルに対して視知覚および社会的認知機能を調べる行動実験をおこない、遺伝子型の違いと行動レベルの違いを結びつけることにより、個体間の違い、また種間の違いを検討していく予定である。
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