研究概要 |
平成22年度は南部スーダンへ渡航し、約9ヶ月間にわたる現地調査を行った。今回の調査の目的は以下の二点にまとめられる。第一点は、2010年6月12日~6月19日まで開催されるリフト・バレー・インスティチュート研究会に参加するためである。この研究会は毎年南部スーダンで開催され、スーダン研究に関する世界的第一人者および新進の研究者らで構成される国際的研究会である。第二点は、上記研究会機関を含め、本特別研究員の研究計画に関するフィールドワーク、資料収集を実施するためである。上記の研究会において、スーダンの歴史・法律・社会など多岐に渡る分野の専門家から、本研究課題の調査・研究に関わる非常に貴重なアドバイスを頂くことが出来た。これらのアドバイスをもとに、南部スーダンの中心都市であるジュバ(2010年6月-10月、12月-2011年2月)と、上ナイル州(2010年10月-12月)において人類学的な調査を行った。現地ではジュバ大学の平和・開発センター(Centre for Peace and Development Studies, University of Juba)にて調査を進めた。具体的には、本研究課題に基づき、都市・村落のコミュニティやキリスト教教会への参与観察、政治的な動向の変化とそれに関する人々の意識調査などを行った。さらには大学や国連などの研究・調査機関において研究テーマに関する文献・資料収集を行った。また、2010年6月にスーダンへ渡航する以前には、南部スーダン社会の歴史的な変化に関する先行研究をまとめ、それらを「書評」として雑誌に投稿した(『くにたち人類学研究Vol.5』、80-88頁)。さらに、渡航中にも研究論文を執筆し、学術雑誌に投稿した(『くにたち人類学研究Vol.6』現在査読中)。平成22年度の調査・論文執筆は、一国の独立を決定する住民投票期間に行ったため、本研究にとって重要なポイントとなる民主主義と土着宗教との関連性を追及することができ、さらに平成23年度に多様な背景を持つ人々の未来観と政治・宗教との関連性とを調査するための課題を浮き彫りにすることができたという点で意義があると考える。
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