研究概要 |
私たちが知覚する時間は,しばしば物理的な時間とは異なる進み方をするように感じられる。本研究は,特に運動情報が時間知覚に与える影響について,それがどのような視覚処理段階で生じており,どのように時間知覚に作用しているのかを,心理物理学的手法を用いて明らかにすることを目的としている。本年度では,運動情報が時間知覚に及ぼす影響が,どの視覚段階における情報処理によって生じているのかを検討した。実験では,方位の異なる二つの運動縞を重ねて作られるプラッドパターンと呼ばれる運動刺激を用い,各運動縞の速度と,二つの運動縞が統合されて知覚されるパターン運動の速度をそれぞれ操作して,時間知覚への影響を調べた。一連の実験の結果,運動縞の速度に関係なく,パターン運動の速度に従って知覚される時間が変化することが示された。これは,運動縞が処理される低次のレベルではなく,パターン運動が処理される高次のレベルでの運動処理が時間知覚に影響することを示唆している。これらの成果を5つの国内・国際学会にて発表を行った。そのうち日本視覚学会2010年夏季大会における発表でベストプレゼンテーション賞を受賞し,その成果がVISION誌に掲載された。
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