研究概要 |
本研究は,視覚情報処理が時間知覚にどのような影響を与えるのかについて,特に運動処理に着目して検討を行っている。本年度は,主に以下の内容を明らかにした。 (1)静止画の運動印象が時間知覚に与える影響:動きを感じる静止画の方が,動きを感じない静止画よりも観察時間が長く知覚されることを確認した。さらにこの効果は,刺激間の低次の視覚特徴の違いでは説明できず,人の姿勢から喚起される運動印象だけでなく,人以外の動物の姿勢から喚起される運動印象でも生じることを示した。 (2)速度と時間周波数の処理が時間知覚に与える影響:時間知覚に与える点滅の時間周波数の効果量は,呈示時間に伴い増加するが,運動速度の効果量は呈示時間に依らず一定であることを示した。さらに運動刺激は静止刺激よりもオンセットが先に知覚されることを示し,速度の処理は刺激の知覚タイミングに影響を与えることを示唆した。 (3)速度勾配が時間知覚に与える影響:減速対象の方が,加速対象よりも観察時間が長く知覚されるという現象を確認し,この現象が直線的な変化の場合だけでなく,断続的な変化でも生じることを示した。さらに速度による時間の過大視が呈示時間の始めの方で効果が大きくなることを示し,これが減速対象と加速対象の知覚時間差の原因であることを示唆した。 (4)外発的な動機付けが時間知覚の正確度に与える影響:外発的な動機付けが高い場合には,低い場合よりも時間作成課題における作成時間の絶対誤差が小さいことを示した。 これらの成果を6つの国内・国際学会にて発表し,2本の論文を刊行した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は研究の目的の達成に向け,様々な方向から研究を展開し,新たな成果が生み出された。これらの成果について,3つの国内学会,及び3つの国際学会において発表を行った,また,昨年度の成果は原著論文として査読付きの米科学誌に受理され,今年度の成果も現在2本の論文を専門誌に投稿中である。これら成果は当初の予定通りであり,おおむね順調に進展していると評価する。
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今後の研究の推進方策 |
今年度得られた成果を,現在投稿中のものを含め,雑誌論文として報告していく。また今年度の成果を基に,さらに新たな研究を展開し,それらの成果を引き続き学会発表や雑誌論文などで報告していく。さらに研究期間の最終年度を迎えるにあたり,これまでに得られた知見をまとめ,視覚情報処理がどのように時間知覚に作用していくのかについてのモデルを構築する。
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