研究課題/領域番号 |
10J04469
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
久野 草太郎 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | アオコ / ラン藻 / ミクロキスティス / ファージ / 遺伝的多様性 |
研究概要 |
本申請研究は、原核生物に備わるファージ耐性遺伝子領域であるCRISPR配列に基づいて、アオコ発生湖沼における有毒ラン藻Microcystis aeruginosaとそれに感染するファージの「感染の組み合わせ」の多様性を明らかにすることを目的とする。 本年度はまず、前年度にM. aeruginosa培養株および環境クローンから得たCRISPR配列の解析を引き続き行った。本種培養6株において、ファージ由来配列であるスペーサーの組合せは、株ごとに全く異なっていた。また、広沢池(京都市)試水より増幅した本種CRISPR配列は、それぞれ異なるスペーサー配列を有する24のタイプに分類された。以上の結果から、自然環境中における「感染の組合せ」の複雑さが示唆された。一方、ファージMa-LMM01のゲノム配列とそれに由来するスペーサーとの間には複数の静的変異が見出され、CRISPRを回避するファージの生存戦略が示唆された。以上の成果は、アオコ発生環境におけるラン藻-ファージ相互作用について得られた初めての知見であり、すでに国際誌へ投稿し、現在改訂稿の査読中である。さらに、現場環境における本種個体群の多様性をファージ感染履歴に基づいて評価するため、広沢池をフィールドとし、2009年、2010年、2011年の夏季~秋季にかけて、計107株のM.aeruginosaを分離した。これらの株からDNAを抽出し、前年度に確立した特異的PCR法により、CRISPR領域の有無を調査した。その結果、約40株についてPCR産物を得ることができた。一部の株についてCRISPR配列を決定したところ、前年度のクローン解析では検出されなかったタイプが新たに見出され、さらなる多様性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度はラン藻のファージ耐性遺伝子領域の多様性について、基盤情報を蓄積し、国際誌への論文投稿を果たした。また、交付申請書に記した研究計画のとおり、ラン藻分離株を樹立し、その解析を行った。以上の成果により、当該年度までの研究計画はおおむね達成されたと判断する。
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今後の研究の推進方策 |
今後は前年度までに確立したラン藻株の解析を主として研究を進める。具体的には、rRNA遺伝子領域を用いた分離株の系統タイピング、特異的PCR法によるCRISPR前半配列の解析を行い、本種個体群におけるファージ感染履歴の多様性を明らかにする。前年度までの予備調査で、一部の株ではPCR産物が得られず、CRISPR領域を有さない可能性が示唆された。そこで、CRISPR関連機能遺伝子を標的としたドットブロットハイブリダイゼーション法を確立し、CRISPR領域の有無を調査する予定である。
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