研究概要 |
PB1-F2タンパク質発現ミュータントであるウイルスをリバースジェネティクス法により作出した.作出したウイルス株は全部で三種であり,一つは,90個のアミノ酸からなる野生型PB1-F2タンパク質を持つウイルス,一つは,新型ウイルスに見られるような11個のアミノ酸からなる変異型PB1-F2タンパク質を持つウイルス,もう一つは,PB1-F2を完全に欠損したウイルスである. これらのウイルス学的特徴を調べるべく,三種のウイルスをヒト腎臓由来細胞株であるHEK293細胞に感染させ,遺伝子発現量の違いをqRT-PCR法により解析した.その結果,野生型PB1-F2を有するウイルス株は,それが短い・あるいは完全に欠損している変異体に比べて,有意にインターフェロンベータの発現を強く誘導することが判明した. これと同時に,感染細胞内において,PB1-F2と相互作用する宿主因子を探索すべく,PB1-F2タンパク質を強制発現した細胞において免疫沈降を行った後,LC-MS質量分析器を用いて解析を行ったところ,90個の新規宿主タンパク質が同定された. これらの知見より,PB1-F2タンパク質は,感染細胞において,インターフェロンベータを誘導する能力を有することが明らかになり,加えて,その誘導メカニズムに関与すると考えられる宿主側の因子を90個に絞り込むことに成功した.今後は,siRNAスクリーニングを用いて,どの宿主因子がPB1-F2によるインターフェロンベータの誘導能に関与しているか,詳細なメカニズムを解析することにより,新型ウイルスのPB1-F2タンパク質の機能解明へと発展させる.
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