研究課題/領域番号 |
10J04711
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
高田 一樹 慶應義塾大学, 商学部, 特別研究員(PD)
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キーワード | 企業倫理 / 企業の社会的責任 / 雇用と就労 / 配慮義務 / 国連グローバルコンパクト / 国連責任ある経営教育原則 |
研究概要 |
本年度は以下の点を中心に研究活動を進めることができた。 1つ目に、配慮(ケア)の概念を学際的な観点から考察した。会社法における善管注意義務・配慮義務、や化学工業におけるレスポンシブルケアなどあるものの、企業経営という文脈でのケアの理解は限定的である。本年は、倫理学、心理学、社会学など複数の学問領域における配慮の考えかたをまとめ、雇用と就労という文脈への適用可能性について検討すべく、関連する研究会に足を運んで議論と報告を行った。 2つ目に、企業倫理の制度化の進捗状況に関する幅広い知見を得た。国連グローバルコンパクト、ISO26000など企業経営の責任を重視するイニシアチブについて、世界的な動向を踏まえつつ、国内での取り組みを知るためにシンポジウムなどに精力的に参加した。グローバル化と多国籍化の進展に伴い、責任ある企業経営の取り組みとしてBOP(bottom of pyramid)ビジネスに注目が集まる現状や、上述したイニシアチブへの関心の高まりを確認することができた。 3つ目に、企業倫理の制度化の新たな展開として、高等教育機関における取り組みを参与観察した。 これまで企業のかじ取りは経営者の役割とみなされてきたが、ステイクホルダー理論の提唱と普及により、利害関係者との対話や相互作用が経営に大きな影響を及ぼすと考えられはじめている。次世代の組織のリーダーを育成するという観点から、いくつかの大学では、企業の社会的責任や持続可能な社会構想について学生が学ぶ教育機会の拡充が試みられている。本年は、その世界的な動向を調べるとともに、受け入れ研究者とともにプロジェクトに関わりながら、国連責任ある経営教育原則を基軸とする企業倫理教育の制度に関する知見を深めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3ヵ年の研究課題に即して、初年度は企業倫理が制度化された経緯と近年の動向を中心として研究を行い、2年目となる本年度は、配慮(care)をめぐる多角的な言説とその企業経営における適用の可能性について考察を行った。3年目には、企業経営における雇用と就労についての考察を進め、これまでの研究成果とともにまとめる予定である。以上の点から、現在までの達成度がおおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
研究課題につき最終年度となる本年度は、企業による雇用と就労への配慮について、企業倫理の制度化という観点から理論的な考察を進める。ただし昨年度までに引き続き、国連グローバルコンパクトやISO26000、また国連PRMEなどの進展に注目しながら、企業倫理の制度化の動向についても情報収集を行う予定である。現時点では研究遂行上、特に問題があるとは考えていない。
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