本年度は、既存の経営教育に見直しを迫ることで責任ある経営を目指すアプローチに着目し、倫理的な就労環境を実現する企業責任への理論的な考察を深めた。とりわけ「国連-責任ある経営教育原則(UN-PRME)」の活動に携わりつつ、既存の企業倫理制度との関連付けを図るための作業を重ねた。 まず、企業の責任ある経営を教育するアプローチとその諸実践について調べを進めた。国連一責任ある経営教育原則(UN-PRME)は、高等教育のカリキュラムに持続可能な社会構想と企業責任というテーマを反映させる目途のもとに、2007年に発足した。私は2012年6月に開催されたグローバルフォーラムに出席し、PRME加盟校の代表者らと意見交換を行い、交流を深めた。 同年12月8-9日には第3回PRMEアジアフォーラムが日本で開かれた。韓国、インド、マレーシアなどの加盟校の代表者らが一堂に会し、地域内の結束を強めることで、責任経営教育の現状認識と課題を共有した。初日には来賓による講演のほか、教育実践に関するカントリーリポートが行われた。私は日本における責任経営教育の一例として、学生を主体とするプロジェクトの活動を紹介し、その課題と可能性を報告に臨んだ。 つぎに企業倫理の制度化という文脈におけるPRMEの位置づけを考究した。企業倫理制度の類型として、取り締り型(regulation)、組織主導型(program)、宣誓型(code)、主導誘発型(initiative)からなる新たな枠組みを提示したうえで、PRMEが主導誘発型の制度であることを結論付けた。そしてこれらの研究成果を学会や懇話会で発表した。 また昨年に引き続き、ウェブサイトを通じて情報発信を行った。企業倫理制度の関連文献を紹介するともに、PRMEの活動をまとめることで、近年の動向をネット上で知らせることに努めた。
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