研究課題/領域番号 |
10J04900
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
山本 真幸 千葉大学, 大学院・融合科学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 有機分子 / 擬1次元金属ストライプ構造 / 光電子分光法 / STM / 1次元discrete latticeモデル |
研究概要 |
今年度前半は東日本大震災の影響による長期的な計画停電が予想されていたため、本来の研究目的から少し離れて、主に高分子PEDOT/PSSの電子状態を光電子分光により調べた。高い導電性と透明性を持ったPEDOT/PSSは、有機LEDや有機太陽電池のホール注入バッファ層として用いられており、用途に応じて異なる混合比のものが市販されている。混合比の違いがどのように有機デバイスの性能に効いてくるかを知るためには、まずそれらの電子状態への影響を調べる必要がある。我々は、高性能の光電子分光装置を用いることで、特に電気伝導に関与するフェルミ準位近傍の状態に焦点をおき、それらの違いを調べた[本研究結果は共同研究者の篠塚大生くんが卒業研究として発表した]。 今年度後半からは物質・材料研究機構の内橋隆氏の協力により、STMを用いた実験が可能になった。申請者は、In(4x1)/Si(111)基板に作製した金の擬1次元ストライプ構造上に磁性金属を含むフタロシアニン分子を蒸着し、磁性分子と金ストライプとの相互作用による近藤効果とRKKY相互作用の観測を試みた[学会発表3]。また、先行研究として観測されていた銀ストライプ構造上に蒸着したコバルトフタロシアニンによる1次元細線上の波動関数の閉じ込め効果の原因を知るために、1次元discrete latticeモデルを用いて系の解析を行った[学会発表4,5]。 上記の実験に加えて、昨年度行ったグラフェン上に作製したF4TCNQ分子のアニオン膜の電子状態の研究結果を国際会議、及び、国際ワークショップにて発表した[学会発表1,2]。また、一昨年度行ったグラフェンナノリボンジャンクションにおける磁気輸送特性の理論的研究の結果を論文にまとめて出版した[雑誌論文1]。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、東日本大震災の影響により夏季期間における長期的な計画停電が予想され、研究を遂行するために必要な超高真空状態を長時間保つことが難しいと考えられていたが、これが幸い杞憂に終わったため。また、物質・材料研究機構にてSTMを用いた実験が可能になり、光電子分光に加えて、有機薄膜系に関するより多くの知見を得られるようになったため。
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今後の研究の推進方策 |
当初、有機薄膜系における電子散乱の効果を光電子分光法のみで調べる予定であったが、本年度後半より物質・材料研究機構にてSTMを用いた実験が可能になった。STMは光電子分光法に比べ、試料に直接的に電流を流すため、電子散乱の効果をより簡単かつ詳細まで調べられることが期待できる。そのため、最終年度はSTMを用いた実験に軸をおき、様々な有機薄膜系の研究を行う予定である。
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