研究課題/領域番号 |
10J04900
|
研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
山本 真幸 千葉大学, 大学院・融合科学研究科, 特別研究員(DC1)
|
キーワード | ラジカル分子 / 自己組織化 / 表面物性 / 光電子分光法 / STM |
研究概要 |
通常、有機分子の超薄膜は、結晶表面においては自己組織化による周期的な配向性を示す一方、物性面においては単独分子のエネルギー準位を強く反映したバンド絶縁体であり、分子の集合化による新しい物性の発現を期待できる系ではない。その原因としては、有機分子の電子状態が閉殻構造であることや分子間相互作用が弱いことなどが挙げられる。これに対し、環状チアジルラジカルは、硫黄および窒素原子間の大きな分極に起因した強い分子間相互作用を示すラジカル分子であり、そのバルク物性は通常の有機集合体のそれとは異なることが報告されている。一方で、このような特異な性質を持つ環状チアジルラジカルの超薄膜の物性研究は、これまでほとんど行われていない。 本研究では、環状チアジルラジカルの一種であるBDTDAバイラジカルの単層膜をCu(111)基板上に作製し、その分子配列と電子状態をSTMISTSを用いて調べた。その結果、ハニカム格子形状の分子配向が室温において観測された。この配向パターンはBDTDAバルク結晶におけるそれとは明らかに異なっており、またLEED測定の結果からも、系がCu(111)基板の影響を受けていることが示唆された。一方、STS測定では、フェルミエネルギー近傍でDiracconeの存在を暗示するV字型のdI/dV特性が観測された[学会発表1,2]。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
これまでバルク物性しか研究されていなかった環状チアジルラジカル分子の低次元物性を初めて観測することができた。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究では金属基板上に環状チアジルラジカルを自己組織化により配列させたが、今後は半導体基板や原子単層膜基板上に分子を並べ、分子単層膜の物性、および、分子と基板がハイブリッドした膜の物性を精力的に調べていきたいと考えている。
|