研究概要 |
自転車やバットなどの道具を上手に使いこなせるようになるなど,我々は高度な運動を学習により獲得することができる。また、脳卒中により身体の一部に麻痺が生じたときも、リハビリテーションを通じて運動機能を回復することができる。運動に携わる主な脳の領野である一次運動野には,少なくとも1億個以上のニューロンが存在する。一方,脳から送り出された運動指令を受ける筋肉は高々400個しか存在しない。つまり,我々が普段行っている運動にはニューロンの冗長性の問題が内在している。本研究では運動野モデルの理論解析を行い,ニューロンの冗長性は運動学習の学習速度を最大化していることを定量的に示した。つまり,ニューロンが大多数存在することは,高度な運動を素早く学習するために必要な神経基盤であることを明らかにした.以上でとりあげたニューロンの冗長性は,片腕運動における運動野モデルを想定していた。一方、我々は普段片腕だけではなく両腕を同時に動かす状況が多い。この両腕運動が脳卒中リハビリに有効である可能性が示唆されている。申請者は運動野モデルの一部のニューロンを病的に切除した脳卒中モデルを両腕運動時に拡張を行い、なぜ両腕運動が脳卒中リハビリに有効なのか、そしてどのような脳卒中患者に対し両腕運動が有効なのか、という問いを考えた。その結果、両腕運動は片腕運動と比較し、運動計画においてのみ神経活動が変化し運動実行ではニューロンの寄与は片腕運動とかわらないこと、そして半球間抑制が強い患者のみ、両腕運動が有効であることを示した.半球間抑制は脳卒中患者においても推定することが可能であり、今後の臨床応用可能性が見込まれる。
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