以下の4研究を行い、他者の行為に関連した表象が自己の課題遂行に及ぼす影響に関する研究成果を得た。1.他者の指差し行為を示す課題とは無関係な画像が、観察者の反応行為に及ぼす自動的な影響について検討した。指差し方向での観察者の行為の促進がみられた。また、左手での指差し画像は左手での、右手での指差し画像は右手での反応を促進したが、この効果器プライミングの生起には時間を要した。他者の行為を知覚すると、自己の課題遂行に対して、その行為の記号的な意味と行為に関連した身体特徴に基づく影響が同時に、異なる時間特性を示しながら独立して自動的に生じることを明らかにした。2.隣接する他者と分担して課題を遂行する場合の認知表象特性について検討した。呈示された刺激に基づき自分の側での単純反応を行うかどうか判断する課題においては、隣接する他者の課題や両者の行動タイミングの相補性によらず、他者がもう片方の反応を担当していれば、刺激が自分の側に呈示された方が相手の側に呈示された場合よりも反応がはやかった。-一方、両者がそれぞれ異なる2反応を担当し選択反応課題を行う場合には、相互の課題間干渉は観察されなかった。他者と隣接して課題を遂行する場合、他者の課題や行為者のタイミングではなく行為そのものが表象され、自身の反応位置を空間的に定義する基準となることで、自己の課題遂行に影響することが示唆された。3.知覚と行為の相互作用において、刺激の知覚が反応行為に自動的に及ぼす影響についての知見を整理し、知覚と行為の表象特性が課題遂行に影響するメカニズムを明らかにし、個人内相互作用と個人間相互作用との異同の解明のための基準を明らかにした。4.行為と知覚およびそれらをつなぐ課題ルールの表象特性に関して明らかにするために、構えの準備、ルールの実現、行動決定とその評価に関連する神経メカニズムについて機能的MRIを用いて検討した。
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