本研究の課題は、英領ナイジェリア殖民地における、任意団体活動の実態及び新聞のおける表象を検討し、アフリカにおける「市民社会」歴史的発展過程を明らかにすることである。本年度は、6月に開催されたイギリス帝国史研究会にて国内のイギリス帝国史研究の動向を確認し、7月から8カ月間は、本研究の主要な史料となる南部ナイジェリア出版された新聞を詳細にみていく必要性から、イギリスでの史料収集を行った。イギリス滞在期間中は、関連セミナーに参加するとともに、本研究の土台となる1880年から1920年に出版された新聞7紙を閲覧・複写し、任意団体活動に関する文献および史料調査を行った。その際には、以下の4点に焦点をあてた。第一に、1880年から1920年英領ナイジェリアで出版された新聞の特徴および社会における位置。第二に、当時の新聞に記録されている任意団体活動全般に関する記述。第三に、記念事業団体の描写。第四に大英帝国に関連する任意団体団体の描写である。この海外渡航により、来年度から研究の成果報告を行うための、情報・史料・文献収集および分析作業の大部分お終えることができた。また収集した史料の考察によって以下の分類は得た。第一に、植民地初期の南部ナイジェリアでアフリカ人エリートが設立した任意団体の分類は、宗教団体、余暇活動団体、文学・教育団体、記念事業団体、職業別団体、大英帝国関連団体の7種類に分類でき、それぞれの特徴と時代による変化、新聞における描写の特徴が明らかになった。第二に、大英帝国に関連する団体として注目した、ヴィクトリア女王即位50周年・60周年記念式典委員会に関する記述から、ナイジェリア史において議論が続いているヨルバ人意識発展の過程における大英帝国の役割が見えてきた。12月には成果の一部をバーミンガム大学にて報告した。
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