研究概要 |
本研究の目的は、霊長類への進化を引き起こした可能性のある遺伝的変化を同定することである。霊長類と他の生物の違いを作る原因の一つは、霊長類特異的な変異によって引き起こされる遺伝子制御の機能変化と考えられている。また、遺伝子制御領域の一部が、脊椎動物全般で高度に保存されるタンパク質非コード領域(CNS: Conserved Noncoding Sequence)に多く存在することが知られている。そこで、本研究では、脊椎動物の中でも特に多くの基本的ボディプランが共有される四足動物全体で強い遺伝的制約を受けているCNSを抽出し、その領域に存在する霊長類特異的な変異を同定する。各CNSからの霊長類特異的な変異の同定は、これまであまり行われていない一塩基座位での解像度で行う。この高い解像度を実現する統計的な検出力を得るため、哺乳類ゲノムに加え、霊長類に対し十分な変異が蓄積している鳥類・爬虫類・両生類のゲノムを用いる。現在、霊長類以外の四足動物特異的CNSの特定はほぼ終わり、霊長類特異的な変異が存在する領域の機能推定を行うデータが集まりつつある。本年度の成果は進化学会(東京)とSMBE2011(Lyon, France)で発表された。
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