研究概要 |
ナノスケール領域での現象,例えば生体分子反応などの生命現象を支えるシステムの解析や,そのメカニズムの応用はナノサイエンス・エンジニアリングにおいて重要である.光制御型DNAナノマシンは,遠隔からの光制御信号に従って,分子情報の取得,処理,制御を行うことから,ナノ領域の解析や制御において有効な手法であると考えられ,実用的なツールとしての実現に向けて研究を進めている.今年度は,ピンセット状のDNA構造体から構成される光制御型DNAナノマシンについて検討した.光制御を可能にするために,アゾベンゼンを挿入したヘアピン構造により実現されるDNAの分子認識機能の光スイッチ機構を利用した.光照射に従って,特定分子の有無を検知し,その結果を蛍光信号により出力する一連の動作を実証実験により明らかにした.光駆動のため溶液環境を変化させることなく動作することから,安定した繰り返し動作が可能であることも確認している.この光制御型DNAナノマシンの課題点として,動作効率が低いことと溶液温度の制御も必要な点が明らかになった.こうした課題を解決し,さらに光制御の自由度向上も可能にする手法として,金ナノ粒子を利用した手法について検討した.金属ナノ粒子の近傍に発生する熱エネルギーとその拡散範囲をシミュレーションにより求めた.金属ナノ粒子の種類,形状,サイズの設計による光学特性が異なることから,本手法は光制御型DNAナノマシンの外部からの操作性向上が期待でき,ナノ領域の解析や制御に有効な手法を提供すると考えられる.
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