研究概要 |
本研究では,光技術とDNAナノ技術を利用し,センシング,情報処理、アクチュエータ機能を備えた光制御型DNAナノマシンの実装手法の開発を行った.DNAの分子認識能と自律的反応は,ナノスケール領域で生体分子に関する情報を取り扱う際に有用である.また,光と物質との相互作用の利用により,非侵襲かつ遠隔的に外界とプロセッサの情報通信が可能となる. 光制御型DNAナノマシンの実装には,センシング,演算,出力の一連の動作をナノスケールで実現することが求められる.実現のための要素技術として,分子センサ機能の光制御手法とDNA構造変化を利用した状態遷移表現を検討した.その上で,光信号のタイミングに従って,DNAフラグメントを検知し,特定のフラグメントの有無を判断し,その結果を蛍光信号として出力するナノマシンを提案した.実験により,光制御型DNAナノマシンの基本動作を確認し,光とDNAを利用してセンサ・演算・アクチュエータの一連の動作が実装できることを示した. 演算機能の拡張手法として,蛍光共鳴エネルギー移動(Fluroescence Resonance Energy Transfer,FRET)による信号処理を導入したDNA論理回路の構成手法を提案する.この手法をDNA足場論理と呼ぶ.入力分子情報に従って,足場となるDNA上の蛍光分子の配置を制御し,FRETによるシグナル伝達を切り替えて演算結果を得る.NOT,AND,OR演算を含む論理回路の動作を実証実験により確認した.乗法標準形で表された演算を処理可能であることから,任意の論理演算が実装可能であることを示した. DNA足場論理においてメモリ機能を実現するために,FRET回路に組み込み可能なセット/リセットフリップフロップを検討した.蛍光分子の光制御によるFRETの変調を利用し,状態に応じてFRETのオン/オフを切り替えるフリップフロップを実装した.繰り返し遷移や状態保持可能であることを示した.
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