〈ペチュニアのin vitro受精系の確立に向けて〉 S-RNaseを介した自家不和合性では、和合、不和合に関わらず花粉は正常に発芽することが知られている。自己花粉管の伸長拒絶が雌ずい内でどのように行われているのかを観察するためには、いつ、雌ずいのどの地点で花粉管伸長が止まるかを把握する必要がある。Petunia hybridaにおける授粉後の花粉管の伸長を経時的に調べるために、和合もしくは不和合授粉後、酢酸エタノールによって組織を固定し、アニリンブルーによって花粉管を可視化した。その結果、和合授粉後では12時間後に雌ずいの1/2まで伸長し、24時間で子房に到達した。一方で、不和合授粉後では、7時間前後では和合授粉と変わらない花粉管伸長が観察されたが、その後は明らかに花粉管伸長速度が低下し、雌ずいの1/2程度まで到達した時点で完全に伸長が停止した。この観察により不和合花粉の拒絶反応は12時間までには完了していると考えられた。次に雌ずい内のS-RNaseの局在を解析するためにS-RNaseの抗体を作製した。特定のSハプロタイプのS-RNaseを検出する目的で、S3L-RNaseの可変領域17残基のペプチドを抗原とした。作製された抗体を用いてウェスタン解析を行ったところ、S3Lハプロタイプをもつ雌ずいでのみバンドが検出された。S3L-RNaseを特異的に検出できる抗体が作製できたため、今後は免疫染色を行い雌ずい内での局在を明らかにしていく。またこの抗体を用いて、S3L-RNaseと相互作用する因子も明らかにしていきたい。
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