本年度は、トップダウン技術であるフェムト秒レーザーを用いた二光子還元法と、ボトムアップ技術であるブロック共重合体テンプレートを融合することによって、ナノスケールの金属微粒子の作製が可能であることを示し、新しいメタマテリアル作製技術の土台を構築した。 本研究では、量産性に優れた自己組織化材料を用いて、メタマテリアルの素子となる金属ナノ構造体を作製する方法を開発するために、金属を三次元に析出させることが可能なフェムト秒レーザーを用いた二光子還元法と、百ナノメートル以下の周期構造を自己組織的に形成するブロック共重合体テンプレートを組み合わせた。親水性ポリマーと疎水性ポリマーからなる3種類の異なるブロック共重合体を用いて、カバーガラス上に薄膜を作製した。熱処理または溶媒アニールによって親水性ポリマーと疎水性ポリマーのミクロ相分離を促し、50-100nm程度の周期構造を得た。薄膜の上に金イオンまたは銀イオンを含む水溶液を滴下し、親水性ポリマーに金属イオンを導入した。金属イオンが導入されたブロック共重合体薄膜に、集光したフェムト秒レーザーを照射した後、走査型電子顕微鏡でナノ構造を確認した。ブロック共重合体薄膜がフェムト秒レーザーに対して十分に吸収をもたないとき、集光点内で金属イオンの還元反応が起き、大きさ約30nmの金属の微粒子を与えることが示唆された。一方で、光子密度が非常に高くなるフェムト秒レーザー集光点で発生する熱が、ブロック共重合体薄膜を融解する現象が確認され、金属ナノ構造への融解の影響については、今後の検討が必要であることがわかった。
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