研究目的1:精嚢腺由来の腟栓形成タンパク質の体内受精における必要性を調べる 当初の予定ではKOMPでSVS2 KOマウスを購入予定であったが、KOMPで購入したキメラマウスでは生殖系列に組込まれておらず、次世代が得られなかった。そこで、共同研究者である吉田学准教授(東京大学)が作製途中であったSVS2 KOマウスを国立成育医療研究センターへ納入し、解析を行うことにした。 SVS2を欠損したオスマウスの妊孕性を確認するために、オス1匹とメス2匹を1ケージに入れて妊娠・出産の頻度を確認した。SVS2 +/-のオスはWTと変わらない妊孕性を示したが、SVS2-/-のオスは10%未満の妊娠頻度を示した。特に、性成熟の8週齢以降に交尾した場合は全く産仔が得られなかった。また妊娠した場合の一腹当たりの産仔数には差がなかった。このことから、SVS2 KOマウスは交尾と受精のタイミングが悪いフェノタイプと言える。8週齢以前においては10%ほど産仔が得られる理由については今後検討を行いたい。 また、SVS2シングルKOマウスで顕著なフェノタイプが観察されたことから、SVS2-6の領域を欠損するマウスの作製は中断している。 研究目的2:メス生殖器による精子からのSVS2の除去機構 精嚢腺タンパク質SVS2は子宮・卵管内のpH変動が上記の現象を引き起こしていると仮定し、pH変動によるSVS2の精子受精能に及ぼす抑制作用を観察した。IVF培地中に緩衝剤であるHEPESをpH6.5-7.5-8.5に条件を変えたものを添加し、受精率を観察した。その結果、SVS2の抑制作用はpH依存的に解除され、pH8.5において最も高い受精率を示すことが分かった。この結果から、卵管内のpHがアルカリ性に傾いていると予想されるが、実際にマウスの卵管内pHは測定できていない。
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