研究概要 |
異種金属(M)-Tb^<III>-チアカリックスアレーン(TCA)三元錯体について調査した結果,MとしてAg^IおよびCd^<II>を用いた時のみ三元錯体が形成し,Ag-Tb-TCA三元系では,中性pH付近でAg_2・Tb_2・TCA_2錯体,高pH領域で発光寿命(τ)が極端に高いAg_2・Tb_1・TCA_2錯体(τ=4.6ms)が形成するが,Cd-Tb-TCA三元系では,pHをあげてもAg_2・Tb_1・TCA_2錯体のような長寿命発光錯体は形成せず,Cd_2・Tb_2・TCA_2錯体(τ=1.04ms))が形成することが判明した.またX線結晶構造解析の結果から,Ag_2・Tb_2・TCA_2錯体は金属イオンが環状にAg-Ag-Tb-Tbの順で配列している事が明らかとなった.一方,Ln^<III>として近赤外領域に発光遷移を有するYb-<III>,Nd^<III>を用いたところ,Ag-Yb-TCA三元系では,Ag-Tb-TCA三元系と同様の挙動(中性pH:Ag_2・Yb・TCA_2錯体,高pH:Ag_2・Yb_1・TCA_2錯体)を示したのに対し,Ag-Nd-TCA三元系では,pH5~11の領域でAg_4・Nd_1・TCA_2錯体が形成し,X線結晶構造解析より,水溶液中でありながら水分子をNd^<III>から完全に除去した構造をとっていることが判明した.発光量子収率を調査したところ,Ag_2・Yb_1・TCA_2錯体が3.3×10^<-3>%,Ag_4・Nd_1・TCA_2錯体が4.9×10^<-4>%と非常に高い値を示した.これはAg^I,Ln^<III>,TCAが水溶液中で自己組織化することによって,水分子が完全に排除した超分子錯体を形成したためと考える. Ln^<III>-TCA二元錯体について調査した結果,Ln_1・TCA_1錯体から徐々にサンドイッチ型の錯体に変化し,exo型配位子であるTCAを用いているのにもかかわらずinertな錯体を形成することに成功した.
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