研究概要 |
ランタニド(Ln^<III>)-チアカリックスアレーン(TCA)二元錯体の自己組織化挙動を室温,[Ln^<III>]:[TCA]=1:1において調査した結果,Tb^<III>-TCA二元系溶液では,Tb_1・TCA_1錯体が生成した後,pH7.4ではTb_3・TCA_2およびTb_4・TCA_2錯体,pH9.5ではTb_3・TCA_2およびTb_2・TCA_2錯体を生成することを解明した.しかし,反応条件を制御することで(pH9.5,[Tb^<III>]:[TCA]=1.6:1, 45℃,2日反応),Tb_3・TCA_2錯体のみ高収率で得ることに成功した.Yb^<III>-TCA二元系溶液ではYb_1・TCA_1錯体が生成した後にYb_3・TCA_2錯体を生成することが解明した.Nd^<III>-TCA二元系溶液では,Nd_1・TCA_1錯体が生成した後にNd_3・TCA_2およびNd_4・TCA_2錯体を生成することを解明した.さらに形成した発光性Ln_3・TCA_2錯体の量子収率(φ)を明らかにし{φ=0.16(Tb^<III>), 2.3×10^<-4>(Yb^<III>), 1.7×10^<-4>(Nd^<III>)},本研究で得られた錯体がバイオプローブへ応用可能な発光能力を有していることを見出した. 発光性Ln-TCA錯体のバイオコンジュゲーションのモデルケースとして,牛血清アルブミン(BSA)-Tb^<III>-TCA系の非共有結合的バイオコンジュゲーションを試みた.その結果,Tb_3・TCA_2錯体はBSAと混合するだけで,静電的相互作用によって非共有結合的に結合可能なことを見出し,従来までの煩雑な有機合成操作により共有結合的に生体分子へ錯体を結合させずとも本錯体は生体分子と混合するだけでバイオコンジュゲーションが可能であることが示された.さらにBSA-Tb^<III>-TCA複合体の結合定数(K_a)を算出することに成功した(log K_a=5.5).
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