研究課題
〈内容〉好塩基球は末梢血中のわずか0.5%を占める非常にマイナーな細胞集団であり、好酸球と共に顆粒球として分類され、アレルギー疾患や寄生虫感染防御応答の際に炎症局所に浸潤することが知られている。我々は昨年度までに、Nippostrongylus brasiliensis(Nb)の2度目の感染において、好塩基球が寄生虫感染局所の皮膚に多数浸潤することを見出している。また、これまでの報告により皮膚における感染防御応答はIL-4依存性であることが明らかになっている。今年度は感染防御のメカニズムをより詳細に検討した。Nbの感染させた皮膚において、感染防御が起こらない1度目の感染に比べて、2度目の感染ではIL-4の産生量が増加しており、IL-4産生細胞を検討した結果、ほぼ100%好塩基球であることが明らかになった。また、IL-4は寄生虫防御に関与することで知られる好酸球の組織浸潤を促進するが、感染時に好塩基球を除いた場合においては好酸球は通常通り浸潤するが、寄生虫感染防御が起こらないかった。以上のことより、Nbの二度目の感染は好塩基球由来のIL-4依存性であるが、このIL-4は好酸球ではなく他の免疫応答を惹起することで耐性に寄与することが明らかになった。〈意義〉マウス好塩基球は寄生虫感染時に増加し、IL-4を大量に産生することで知られているが、その意義に関しては詳しくは分かっていない。今回、感染局所に集まった好塩基球がIL-4を産生し、好酸球の細胞浸潤以外の免疫応答を増強することで感染防御応答に関与することが明らかになった。〈重要性〉好塩基球はアレルギー疾患を引き起こすことが知られているが、好塩基球の本来の役割、生体防御での働きは十分には明らかになっていなかった。今回の研究により、好塩基球が生体防御応答にも重要な役割を果たすことが明らかになった。
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J Dermatol Sci.
巻: 67 (3) ページ: 181-189
10.1016/j.jdermsci.2012.06.005.Epub2012Jun23
http://immune-regulation.org/