研究課題/領域番号 |
10J05127
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
永沢 友裕 東北大学, 大学院・農学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | ラクチミドマイシン / 全合成 / 抗癌剤 |
研究概要 |
ラクチミドマイシンは放線菌Streptomyces amphibiosporus R310-104およびS.latensisの培養液から単離され、各種癌細胞に強力な細胞毒性を示すとともに、ヒト由来癌細胞MDA-MB-231に対して、極低濃度で転移を阻害する。合成の困難さは中程度ではあるが、逆に様々な構造の化学修飾がしやすいため実用的抗癌剤の創製に結びつく可能性があり、その合成化学的価値は高い。申請者は遠隔不斉誘導反応を適用したラクチミドマイシンの効率的全合成および大幅な構造改変も含めた構造活性相関研究(共同研究)の実施により、実用的抗癌剤の開発を目的とした。 アセトアルデヒドより光学活性試薬を用いた遠隔位不斉誘導反応、カップリング反応(Stille型)、マクロラクトン化反応など各種変換反応を駆使することで、最も合成が困難だと考えられるラクトン部分に相当するラクチミドマイシンのコア構造の効率的・立体選択的な合成に成功した。この合成的知見をもとに、出発物質のグルタルイミドアルデヒドより側鎖の各種伸長反応と別途調製したフラグメントを順次連結し、ラクトン部分構造の構築を経てラクチミドマイシンの全不斉炭素・骨格を有する重要中間体の合成に成功した。今後は早期に標的化合物の全合成を完成し、構造改変体の調製に取りかかる予定である。また、これまでの合成研究で得られた各種誘導体と構造改変体の活性試験を行い、なるべく構造を単純化した高活性誘導体の創成を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
標的化合物であるラクチミドマイシンの最重要マクロラクトン骨格の構築に成功し、同時に形式合成を達成した。この知見をもとに、現在までにグルタルイミドアルデヒドから数段階の変換を経てラクチミドマイシン全不斉炭素・骨格を有する中間体の合成に成功している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの合成研究で得た知見をもとに、早期にラクチミドマイシンの全合成を完成させる。また、活性相関のための構造改変体の調製にとりかかり、ラクチミドマイシンの合成研究で得られた各種誘導体とともに活性試験を行う。改変体の調製については、活性試験の結果をフィードバックさせながら臨機応変に進めていき、なるべく構造を単純化した高活性誘導体の創成を目指す。
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