本研究は、日本発の新規多糖である酵素合成グリコーゲン(多糖ナノボール)を用いた新規機能性ゲルマテリアルの開発と応用を目的としている。1年目である本年度は、多糖ナノボールに種々の官能基を導入して基本となる機能性ゲルマテリアルの調製と化学的物理的特性の評価を主な目的とした。そこでコレステリル基等の疎水性基を導入した疎水化多糖ナノボールを合成し、SEC-MALSやTEM観察等による分子会合の有無やタンパク質との相互作用・人工分子シャペロン等の特性評価を行った。その結果、コレステリル基の導入量を下げたり、疎水性度の弱い長鎖アルキル基へ変えることで、分子間の会合を抑制し1分子として存在し得ることを確認した(1分子多糖ナノボールナノゲルの合成)。タンパク質との相互作用については疎水性の強さに比例して複合化能が高くなること、人工分子シャペロン機能を持つこと等を確認した。特に長鎖アルキル基置換誘導体は界面活性を有し、新たな高分子界面活性剤としても機能することを見出した。以上の通り、本年度の目標通り研究が遂行できており、引き続き来年度の研究を行っていきたいと考えている。 また、本年度はこれまでの研究成果を2報の論文として発表できた。1報は酵素合成グリコーゲンのナノゲル形成と特性に関する報告(ACS nano)であり、現在研究している1分子多糖ナノボールナノゲルへの発展の基礎となる研究成果である。もう1報は東京大学医科学研究所清野研究室との共同研究である、ナノゲルを用いた経鼻粘膜ワクチンの開発に関する報告であり、Nature materialsに受理された。これも今後本研究で引き続き行っていく共同研究の基礎となる研究成果の報告であり、本研究の目的遂行のための重要な進展であると考えられる。
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