近年の開発著しいアフリカにおける環境汚染物質がカバ、リーチェなどの野生動物に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。[1]ザンビアのサウスルアングア国立公園のカバの肝臓、餌資源である植物、および土壌・河川底質における重金属および有機塩素系物質の蓄積濃度を測定した。カバの肝臓におけるカドミウムおよび水銀濃度は環境サンプルや植物よりも有意に高く、これら毒性金属がカバにおいても生物濃縮している可能性を示した。(Ecotoxicology and Environmental Safety誌、印刷中)[2]さらに環境汚染の歩哨動物として野生ラットに注目した。ザンビアのカブウェ鉱床付近の野生ラットでは臓器中に高濃度の鉛やカドミウムの蓄積が見られた。さらに、腎臓におけるMTのmRNA発現量が対照地域の個体と比べて有意に上昇していた。フィールド調査で得られた結果が、土壌汚染が原因であることを明らかにするために、カブエ鉱床地域から土壌を採材し、Wistar rat(オス、30匹)に対して1年間の土壌の暴露試験を行った。土壌非暴露群、低濃度金属含有土壌(鉛:75mg/kg、カドミウム:0.4mg/kg)、および高濃度金属含有土壌(鉛:3757mg/kg、カドミウム:6mg/kg)の3群において金属蓄積濃度、血液生化学検査、および金属暴露のマーカー遺伝子であるMTのmRNA発現量を測定した。高濃度土壌暴露群では、肝臓・腎臓・肺・脳・骨における鉛・カドミウム蓄積濃度が他群と比較して有意に高く、腎臓におけるMTのmRNA発現量も有意に高かった。以上の結果より、鉱床活動由来の土壌汚染がラットにおける金属蓄積および生体反応を引き起こすことが明らかになった。フィールド調査および室内実験の結果から、カブエ地域では、野生ラットに加えて家畜などのほかの動物やヒトに対する金属汚染の影響が懸念された。
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